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全国の書店で購入可能ですが、大きい本屋でないと売ってないとの情報もあります。ウェブ上からは以下のサイトで購入可能なようです。
屋根裏さん監修の本です。屋根裏さんのサイトをいかに書籍化するかというのが編集者の目的だったようです。はたして出来上がったものはどうなったか、現物を見て確かめるといいでしょう。
私は音楽の項を担当しました。9枚×13カテゴリで合計117枚のレコード/CDを紹介しています。初めは2007年7月前後に発売予定だったはずですが、その後の事務作業に手間取ったようで、発売になったのは半年後の2008年2月でした。原稿は2007年5月末に書き終えて、9月・12月に2回の修正を行いましたが、基本は2007年夏前に書かれたものなので、記述が古くなっている箇所も若干あります。たしか最初は『世界のアンダーグラウンド』という書名でした(英題に名残があります)。
細かい感想は控えますが、RAW VISION+NWWList+ボブ2007+LOW REZ+TH+現代アート+高円寺×インターネットという印象でしょうか。現在サブカルチャーだと皆が思っているものとはほとんど重ならない領域についてのカタログといえます。
以下のディスク紹介は、修正作業時に削った・入れ替えた・締切に間に合わなかったものです。よって書籍には収録されていません。今後どこかに使う予定もないので、ボーナストラックとして掲載しておきます。
1985年から活動を開始し、宅録テープを次々と発表しているコステスは、全裸で暴れまわりながらライブ中に排泄、性行為やウンコをテーマにした歌詞を歌い上げ、観客には自分のアヌスに指を入れさせる……といった、変態的なパフォーマンスで有名な、人間の美しさと醜さを表現するマルチ・アーティストである。日本でもシミー・ディスクやキャロライナーが注目された頃に一緒に人気を集めた。現在も活動中のはずだが噂を聞かない。
2002年頃から「精神崩壊のために作られた実験音楽」という噂と共にカールマイヤーの音源が広まったのを覚えている方も多いだろう。確かにコウノアヤコのディアマンダ・ガラスを思わせる攻撃的なヴォイス・パフォーマンスには、そうした根も葉もない噂も真実味を帯びるのかもしれない。本作は1994年にヴァニラ・レコーズから発表されたテープで、ヴォイスよりもギターとパーカッション/ドラムによるヘヴィなサウンドが耳に残る。
フレンチ・アヴァンギャルドの隠れた名作として、海外では“ファウスト・ミーツ・ZNR”と評されているエラチウスの1978年の自主制作盤。フリージャズ、ブルース、シャンソンなどの音楽様式が次から次へと現れ、そこに無粋で唐突なテープ・コラージュが被さった、程良い前衛ロックに仕上がっている。エスプリを効かせすぎたポストパンクのフランス流解釈? 単なる天然? 当時のフランスの自主制作シーンで一体何が起きていたのか。
イギリスでコメディアンとして活躍するニールが、デイヴ・スチュワート(エレポップユニット、ユーリズミックスのメンバー)のプロデュースで作った、サイケにプログレにパンクにと、英国音楽史をユーモアで振り返る1984年発表の傑作。ビートルズとストーンズをパロったジャケット(LPではオマケも再現)、60年代サイケを中心にしたカバー曲のポップなアレンジ、曲間に挟まるニールの喋り、全てが計算されつくしていて怖くなる。
アヴァンギャルドな声の使い手、ママ・ベア・テキエルスキの77年の名作セカンド。時期によって違うが、このアルバムでは声帯を震わすドスの効いた歌唱法が特徴で、歌というよりも雄叫びに近いボーカリゼーションには、デメトリオ・ストラトスの影響も感じられる。声が騒音であることは1913年にイタリア未来派のルイジ・ルッソロが発表した騒音芸術宣言で既に明らかにされているが、それを逆手にとった圧倒的な存在感は聴き応え抜群。
美学校での小杉武久の生徒達が卒業記念に作った集団即興グループが、10人からなるイースト・バイオニック・シンフォニア。小杉がタージ・マハル旅行団の方法論を推し進めようとした実験結果ともいえ、各々の即興音がミックスされ増幅していく特殊音響の世界が広がる。メンバーには今井和雄、シェシズの向井千恵、GAPの多田正美、不失者の小沢靖などがいた。20年後、今井を中心にマージナル・コンソートという名前で再び結集した。
1972年に日本で発売されていたらしい謎のアルバム。適度にサイケデリック感が漂うプログレッシヴ・ロックで、全曲英詞である。プロコル・ハルムの影響を指摘する人もいるが真相は不明。ただ、収録されている曲の一つ「ユニバース」は、寺内タケシとブルー・ジーンズが1971年5月にリリースした『明日へ行く汽車』収録の同名曲のカバーであり、遅れてきたエレキ歌謡バンドがニューロックと融合した結果かと邪推することも出来る。
現在は現代美術で華々しい活躍を見せる大竹伸朗は、80年代初頭にジュークという名のノイズ・ユニットを組んでいた。ジュークは4枚のアルバムと1枚のシングルを自主制作で残しているが、パンクと呼ぶにはあまりに実験的・前衛的すぎる雑音の塊が、突然始まってやる気無く終る様子は、同時期のどんなバンドよりもノーウェイヴしている。噂では吉祥寺マイナーにさえ出演を断られたという。大竹が絵画より先に表現することを選んだ音楽。
名古屋で活動するバンド、テアシの2004年発売のファースト。ゆったりとしたボーカルと演奏。一音が長く、途切れては無音になる。音楽制作の技術が進み、多重録音による複雑な構成の楽曲が多い現代において、「間」というものをこれほど意識させられる音楽は無かった。大声や爆音を出さなくても、力強さは伝えられることを証明する、何もないことの衝撃。ライブを観た人によれば、音が鳴らない瞬間に最もテンションが上がるそうだ。
ノイズ・ユニットとして有名だったカレント93は、1987年に突如トラッド・フォークを主体にしたアルバムを発表し周囲を驚かせたが、88年発表の本作も、時折り宗教的アレンジを覗かせる暗黒フォーク作品で、英国の陰に光を当てる好盤だった。本作はかつて日本盤も出ており、発売元のスーパーナチュラル・オーガナイゼーション(80年代に渋谷にあったノイズ専門レコード店)は、カレント93の来日を実現させた日本ノイズ史の重要な存在。
ビートルズが流行する少し前、まだレコードが大人の愉しみだった1960年に、世界で2000万枚の大ヒットとなった「夏の日の恋」を、1976年の流行である16ビートのディスコ・サウンドにアレンジしたのが本作。流麗なストリングスによるスロー・テンポな曲との対比が楽しい。パーシー・フェイスはイージー・リスニング界の巨匠で、90年代に再評価されたSABPMやラウンジ以降の感覚にもずばりマッチする、気持ちいい音楽を量産している。
90年代以降に顕著になった音楽との関わり方の一つにジャケ買いがある。もちろん昔からあったとは思うけども、オシャレなジャケットのレコードを部屋のインテリアとして買う、という感覚は90年代に加速された。本作はそういったムードを評する時に登場する定番的な一枚で、肝心の音楽はイージーリスニング系の、オーケストラ・アレンジがされた涼しげなジャズ。他人の曲を絶妙なグルーヴ・チューンにアレンジする手腕は天才的だ。
タミアは70年代から活動しているフランスの女性ヴォイス・パフォーマー。本作は1981年に自身のレーベルT Recordsから発表した、彼女の声だけで作られたセカンド・アルバムで、16トラックのレコーダーで重ねられたエフェクト無しのタミアの声が、聴く人を無音よりも静かな世界に連れて行く。あらゆる音を削ぎ落とした何にも似ていないミストラル・サウンド。これ以降は旦那のピエール・ファーヴルとの共同名義で作品を発表している。
ジョシー・ドゥ・オリヴェイラは、60年代から活動を開始し、音楽、文章、グラフィック、映画、ダンスなどの分野でマルチな才能を発揮しているブラジルの女性現代音楽家。MPB、トロピカリズモ、ムジカノッサといったポピュラー・ミュージックとは全く関係ない音楽を奏でる音楽家が、ブラジルに当り前のようにいたことの驚き。ヴォイスに電子ドローンにパーカッションにと、矢継ぎ早に現れては消える、エキゾチック・コラージュ作品。
オビに書かれた「音楽は壮大な冗談である」という言葉が一番本質をついている、坂田明を中心に結成され80年代初頭に活動していた、日本よりも海外で評価が高いアヴァン・ポップ・グループのセカンド。ジャズと民謡をミックスしてテクノポップ風に味付けした楽曲はまだいいほうで、後半はほとんど寸劇に近いセリフの応酬になる。果たして何を考えて作ったのか、聴けば聴くほど謎が深まる珍妙な構成。日本のニューウェイヴの極北。
1980年、バズコックスのピート・シェリーの自主制作レーベルGroovyに一枚のアルバムを残した、謎の女性ミュージシャン、サリー・スミット。正体はオルタナ・カントリー・バンドThe Mekonsのメンバーとして知られるサリー・ティムズの変名。本作は同名シュールレアリスム映画のサウンドトラックだとクレジットされているが、フィルムの存在は確認できず。即興的なシンセサイザーとヴォイス・パフォーマンスが交差する、超驚異的前衛サウンド!
前衛/実験音楽をリリースしているアメリカの自主レーベルSwill Radioの創始者、スコット・ファウストが在籍した謎のグループ、アンシュルス。80年代半ばに出たこのアルバムについてほとんど情報はないが、安っぽいエフェクターを通したピアノとボーカルに、冗談のようなシンセの音色がSE共々コラージュされ、かろうじてリズムをキープするパーカッションがカタカタ鳴る、脱力ポップの怪盤。現在スコットはIdea Fire Companyで活動中。
21世紀前半に「関西ゼロ世代」と呼ばれたムーブメントがあったが、2001年に結成されながらそのカテゴライズから漏れ続けていた関西のバンドが山本精一率いるPARAだ。想い出波止場の2004年の傑作『大阪・ラ』を挟んで、ようやく2006年に発表された最初のアルバムから鳴り響いたのは、ギターとドラムとシンセサイザーによる静かで広大な銀河系サウンドだった。反復と変拍子によって構築された人工的グルーヴの甘美さは説明しがたい。
元シトラスの江森丈晃がエンジニア/プロデューサーの渡辺正人と組んだユニット、ヨーガンアンツの1stアルバム。「あらゆる音楽的要素を吸収した」ような音楽は既にこの世にいくらでもあるが、しかし「あらゆる音楽好きに薦められる」という点を重視するなら、本作以上に効果的な一枚は現時点で想像がつかない。ジャズが、プログレが、フォークが、ギターポップが、緻密にデザインされた音響効果の中で渦巻いている過剰な傑作。